新築マンションの設計変更の打ち合わせ前から参加したプロジェクトです。クライアントはクリエイターのお二人、持ち物を減らして今までよりもコンパクトなマンションへの住み替えです。それぞれの仕事のスタイルに合わせた個室と、食事やくつろぎの時間をゆったり過ごせるリビング。そして感性を刺激する自由でオリジナルな空間を希望されていました。
コンセプトは『Taylormade Interior』 あたり前のようにそこにある計算し尽くされた唯一無二の空間を目指して、造作家具のデザインと照明計画に特にこだわってプランしました。インテリアを工夫したり、好きなものを飾るのが好きなお二人のために、全体としては余白を残し、ライフスタイルや気分の変化を受け止められるようにしています。
設計変更打ち合わせへの参加
依頼を相談されたのは、マンション購入を決め設計変更の打ち合わせを行っている途中でした。設計変更するメリットの高いキッチンのオプション、照明やコンセント位置、各種下地の指示などは、家具のレイアウトが決まっていないことには最適解は得られません。まずはお二人のライフスタイルをヒアリングし、おおよその家具のレイアウトを決めました。その後、打ち合わせに同席して設計者とクライアント双方の言いたいことを翻訳。変更箇所は図面で指示し、修正された図面をチェックすることで、クライアントさんの負担と不安を最大限に解消できました。
リビング・ダイニング
ゆったり食事をして、食後もそのままの場所で映画を楽しみたい。それ以外にくつろげる場所が欲しい。人が大勢集まることもある。というライフスタイルに合わせて、テレビの前には低めのテーブルとそれぞれが気に入ったラウンジチェアを置きました。その横には、アイランド型のソファを空間の中央に置き、二人一緒にプロジェクターで映画を楽しんだり、それぞれが本を読んで過ごせるライブラリースペースに。アイランドソファは座れるスペースが多いので、ゲストが集まった時にも役立ちます。そして、この2つのスペースをゆるやかに仕切るのは壁に作った変形の本棚です。お気に入りの本やオブジェを飾って、アイデアが生まれる空間に!
シンプルで広々した空間の秘訣は、存在感を消した照明とカーテン。空間の良さを引き立てるロールスクリーンだけの窓まわり計画と、明るすぎない空間が好きなお二人のために、天井を照らす建築化照明の他には、ダイニングの小さなダウンライト2つだけ。その他に、フォーカルポイントの壁を照らすスポット照明と、キッチンカウンター上のペンダントで空間にアクセントを付け、本棚にも照明を組み入れています。ライブラリースペースはプロジェクターを付けて、充電式のスタンドライトで手元の灯りを補えるようにしています。ダウンライト選びひとつでも、調光できることや眩しくないか、狙った壁に光が当たるかなど、細かく検討して器具を選ぶことで、完成度の高い空間が作れます。
アート
「玄関は家の顔にしたい」と、設計変更で廊下の突き当りのドアを無くし、壁を作ったお二人。当初はモデルルームで見たミラーとタイルの組み合わせを検討されていましたが、費用がかかる上に、決め手にかけていました。そこでアートを飾ることをご提案。立体が得意なKARRAさんの作品を壁に飾り、ダウンライトでスポットライトを当てることで、ここにしか無い素敵な玄関になりました。リビングのフォーカル・ポイントにはAK Akane Fujitaさんの立体感のある作品を飾りました。タイルにも負けない存在感で、オリジナルな空間に華を添えています。
キッチン
お料理が好きなお二人の家電や食器を収納するために、キッチンに3箇所の収納をつくりました。1つ目はペニンシュラキッチンのカウンター下。納まりを良くするため、設計変更でキッチンカウンターの奥行きを変え、造作家具を設置することで、はじめからそこにあったような収納になりました。窓のある壁にも同じデザインの収納を、キッチンカウンターと同じ高さで作っています。マンションのオプションでは白い収納を高さ650mmで作る以外の選択肢がありませんでしたが、それではお部屋のイメージに合わないし、使い勝手もよくありません。お部屋全体をコーディネートすることで、デザイン面でも機能面でも、より良い提案ができます。
3つ目はキッチン背面のスライドドアと、その中の家電収納です。もともとの設計では、扉のついた洗濯機置場、冷蔵庫置場、カップボード用の空間90cm弱がキッチンの背面に設けられていました。キッチンの背面はお部屋の中でもかなり目立つ場所なので、できるだけスッキリさせるために、全体をスライドドアで隠す方法をご提案しました。冷蔵庫の横には家電とゴミ箱を入れられる収納を作り、全てがピッタリ入るように計算されています。
それぞれの個室
それぞれの個室は、仕事部屋も兼ねています。仕事をする場所と寝る場所をゆるやかに分けたいという要望を叶えるために、格子のパーティションを提案しました。模様替えの柔軟さは無くなってしまうので、デスクや本棚の向きや大きさを何度もシミュレーションしながら位置を決定しました。持っている物の量や仕事に必要なスペースに合わせて、デスクと本棚をデザイン。L字にし、下に置いたパソコンの配線にまで気を配っているので、余計なものが目に入らず、気持ちよく仕事に集中できます。
ベッドもデザインにこだわることで、睡眠前後の時間を楽しんでもらえています。ヘッドボードには照明を組み込み、リモコンで操作が可能です。マットレスはふかふかのダブルクッション、ベッドスカート、ランナー、クッション、そして遮光カーテンの裏地まで全てコーディネートしています。「この状態をキープしたい!と、ベッドメイキングするする習慣ができました」と言ってもらえました。
納品を終えて
ご依頼から完成まで、1年以上かかったプロジェクトでした。早い段階から打ち合わせを重ね、設計変更の締め切りまでにプランの8割を固められたことで、満足度の高い空間にできたと思います。インテリア、特に家具やカーテンは最後に決めれば良いやと思いがちですが、実は考えるべきはお部屋の完成イメージです。クライアントさんは過去に2回のリフォームを経験している、家づくりのベテランとも言えるお二人でした。コーディネーターが伴走し、完成イメージから逆算して決めていくメリットを十分に知っているからこそ、想像した通りのデザインと、想像以上に心地よい区間が出来上がったのだと思います。プロジェクトの一員として関われて本当に幸せでした。