海外赴任中に賃貸に出されていたマンションを帰国に際してリフォームしたいというご依頼をいただき、リビング・ダイニング、隣接する子供部屋、寝室のトータルコーディネートを行いました。ソファ、ダイニングセット、キャビネット、ペンダントライト、ベッドなどはすでにお気に入りのものを大切に使っていらっしゃったので、それらに合わせて内装や照明計画、窓装飾をプランニングしました。グレイッシュな壁、断熱性の高いハニカムシェード、子供部屋はリビングとのつながりを重視して長く使えるデザインに、などのご要望をもとに、全体のカラーコーディネートを行うと共に、暮らしに関わる機能面のご提案も行いました。
コンセプトは『都心のシンプルライフ』クライアント宅は二面採光の窓を常緑樹に囲まれた東京の中心部とは思えない静けさのある空間でした。また、そこでの暮らしも厳選された良いものに囲まれたシンプルで過不足のない暮らし。「デサイン」「使い方」「思考」をシンプルに、をキーワードに据え、ご夫婦の要望整理と、意思決定のためのメリット・デメリット整理も心がけました。
明るすぎず、暗すぎず、眩しくない照明計画
最も力を入れたのは照明計画です。照明計画は天井や壁への影響が出ることが多いので、壁紙を変更するタイミングで見直すとできることが増え、余計な費用もかからないのでオススメです。今回は既存のカーテンボックスにテープライトを入れ、ハニカムシェードを照らすことでお部屋全体を明るくする計画にしました。一言でテープライトと言っても、機能面でいろいろな選択肢があります。今回は、暗めの空間がお好きなクライアントさんのために調光可能のなものを選び、演色性の高さにもこだわりました。演色性の高いものを選ぶことで、家具や内装の色がくすまず、料理も肌の色もより美しく見えます。
間接照明の光が届かない壁にアートをかける計画だったので、ここにはスポットライトで光を当てました。以前から使っていたペンダントライトは簡易取り付けのダクトレールについていたので、リフォームに合わせて天井に直接つけるタイプに変更し、天井面がスッキリ美しく、テーブル位置も10cmほどずらして最適な位置に置けるようになりました。
ハニカムシェードを電動にするメリット
私が夏の終わり頃に打ち合わせでご自宅に伺った時、窓にはカーテンが何もついていませんでした。窓から見える緑が気に入っており、また外から見られる心配もないため、冬の冷気対策以外はカーテン類は不要、冬の暖房効率を高めるためにハニカムシェードをご希望されていました。窓が大きい為、通常のコード式の器具では上げている時にもコードがプラプラと下がっている事になり、デザイン的にも安全面でもベストではないと感じたので、電動のものをご提案しました。
電動ハニカムシェードのご提案は初めてだったので選択肢のある各メーカーのショールームを訪問し、それぞれ話を聞きました。各社特徴があり、メリット・デメリットが有り、価格も様々・・・クライアントさんにそれらを説明し、ご自身でもショールームで製品や操作感を確認してもらいました。最終的に充電式の電動が選べるメーカーに決まり、無事に施工が完了したときはホッとしました!
長く使える子供部屋
お嬢さんのお部屋はまだベッドと本棚だけですが、デスクを置いた場合のレイアウトをご提案しました。引き戸で仕切れる空間ではありますが、常に開けて使っているということだったので、リビングとの統一感を重視しつつ、お嬢さんが好きな色を聞いてクッションに取り入れました。窓のツインシェードは遮光の生地を希望されていたので、フロントレースにして効果的に遮光生地を取り入れました。ベッドをすっぽり覆えるベッドカバーはリバーシブルに。ベッドをくるむことで急な来客時にも生活感を消すことができるので、季節や気分に合わせて使い分けてもらえると嬉しいです。

子供部屋に吊るしたペンダントライトは海外赴任先で気に入って購入し、ご主人がハンドキャリーされた思い出のアイテム。コンセント式のものを直接天井裏の電源線につなぎ、市販のプレートカバーをつけて設置しました。シェードを透けて広がる明かりがとても素敵です ^ ^

内装と照明で大変身した寝室
寝室は壁紙を4面すべて暗すぎないブルーグレーに変え、バーガンディー色だった収納の扉は布目柄のダークグレーのシートを貼って変身させました。凹凸のない扉は、シートを上から貼ることで全く別の柄にすることが可能です。壁紙に合わせてドレープカーテンも作り直し、同じ柄でベッドスプレッドも制作しました。タッセルも同色のシックなコーディネートはクライアントさんのお好みにピッタリはまり、とても喜んでいただきました。

寝室も内装変更に合わせて照明計画を見直しています。寝室はリビングよりも更に暗めの照明を希望されており、ベッドに入った時に眩しさを感じないことを重視しているということだったので、あえて足元、収納の近くにダウンライトをつけています。ダウンライトも通常の光が拡散するものではなく、ソフトなグレアレスタイプを選ぶことで、ベッドからは眩しくなく、収納内部はしっかりと見えるようになりました。
細部にこだわってQOLを上げる空間つくり
このプロジェクトでは、家具もそのレイアウトも変えていません。気に入った家具を長く使うライフスタイルはそれだけで、余分なものを買ったり捨てたりする必要がなく、シンプルで心地よい暮らしと言えると思います。クライアントさんが持っている価値観に沿って空間全体をデザインし、派手なことをするのではなく、細部のディティールにこだわった空間は、シンプルだけど最高にリラックスでき、長く心地よく住んでいただけるお部屋になったと思います。