クライアントのご要望と住まいづくりの方向性
ご夫婦二人暮らしで、住み替えを機にマンションのLDK・寝室・書斎のトータルコーディネートをご依頼いただきました。新居はこれまでよりも広く、空間に余白が生まれる一方で、
- 持ち物をきちんと把握し、分類して収納したい
- 生活感を極力出さず、すっきり暮らしたい
- デザインだけでなく、使いやすさ・動線・将来性も重視したい
という想いをお持ちでした。当初はインテリアデザインや雰囲気のお話が中心でしたが、打ち合わせを重ねる中で「空間を美しく保つためには、収納設計が最重要」という結論に至り、壁面収納とカップボードをオリジナルで設計・製作する方針が決まりました。
今回の住まいづくりの軸は、「機能性を突き詰めた結果としての美しさ」。見た目の統一感だけでなく、
- 何を、どこに、どの高さで使うのか
- 日々の動作が最短距離で完結するか
- 将来、ライフスタイルが変わっても対応できるか
といった点を一つひとつ整理し、収納量・寸法・配置を細かく検討しています。空間全体はグレイッシュで落ち着いたトーンにまとめ、照明計画も含めて「大人の住まい」としてのかっこよさと上質感を大切にしました。
リビングの主役となる、全長約4.8mの壁面収納
この壁面収納は単なる収納家具ではなく、空間の印象を決定づける“住まいの顔としてデザインしました。
- エアコンはルーバーで隠し、意匠性を確保
- トール収納には掃除道具や生活感の出やすい日用品を集約
- ゲーム機、ウーファー、ロボット掃除機、充電ケーブル類もすべて内部へ
- 見せる部分と隠す部分を明確に分け、視線ノイズを最小限に
機能を詰め込んでいながら、「何も置いていないように見える」ことをゴールにしています。壁紙を張り替え、そこに極細のライン照明を当てることで、シャープさが際立つデザインにしています。
ダイニングはたくさんのお料理が並べられる幅140cmのテーブルに、特注カラーのCH88T(カール・ハンセン&サン)を組み合わせました。お部屋のイメージにピッタリで、お待ちいただいた甲斐があったと思います。リビングはゆったり自由度高く使いたいとのことだったので、幅145cmのコンパクトなソファを入れています。ソファは大きすぎても小さすぎても暮らしに影響があるので、サイズの見極めが重要です。空間に『置ける』かどうかだけでなく、動線を確認しながらアドバイスさせていただきました。
奥行き60cmの大容量カップボード
マンション特有のコンパクトなキッチンに対し、作業性と収納力を最大化するため、カップボードをオーダー製作しました。
- 配膳・下準備用にスライド天板を設置
- 限られた奥行きの中で、収納量と使いやすさを両立
- 壁紙の貼り替えに加え、パントリー扉もシートで意匠変更
既製品では対応が難しい条件だからこそ、生活動線と人間工学の視点を反映した設計が活きています。
カップボードの奥行きは45〜50cm程度が一般的です。特に吊り戸棚の方は、出し入れしやすいように奥行きを更に狭くする場合も多いです。ただ、そうすると冷蔵庫やパントリーと奥行きが揃わず、ガチャガチャした印象になってしまいます。最終的には、使い勝手と収納力のバランスだけでなく、キッチン全体をフラットに見せることで、少しでもスッキリ美しく見えることを優先して、奥行きを決定しました。
寝室や書斎もトータルコーディネートで美しく
寝室と書斎も、イメージに合わせてトータルコーディネートをしています。リビングなどに比べて要素が少ないお部屋こそ、壁紙やカーテン、照明がお部屋の印象に大きく関わります。また、照明やカーテンは明るさ・暗さに関係する部分なので、デザインだけでなく機能的にも要望を満たしているか?プロならではの視点でアドバイスしています。
今回の住まいづくりは、「好き」「かっこいい」という感覚を出発点にしながらも、暮らしを徹底的に分解し、整理し、設計し直す作業でした。見た目が整っているだけでは、暮らしは長く続きません。逆に、機能だけを追いすぎても何かが足りない。その両立を考えた結果として、このお部屋が完成しました。時間と手間をかけたからこそ、今だけでなく、これからの暮らしにも寄り添い続ける、“ずっと心地いい”と感じられる家が完成したと思います。



