7月下旬、少し早めの夏休みをとって瀬戸内旅行に行ってきました。旅の目的はアート、そして建築です。お天気にも恵まれて、楽しい小旅行となりました。
香川県立東山魁夷せとうち美術館
最初に向かったのは、瀬戸大橋のふもとにある香川県立東山魁夷せとうち美術館です。目的はズバリ建築。今年の春からマイブームが続いている谷口吉生先生の設計した美術館です。この美術館はとにかくロケーションが素晴らしい!海風を受けながらアプローチを進み、こじんまりした展示を観終わると瀬戸内海と瀬戸大橋がパノラマで広がるカフェに出てくる仕掛けです。谷口先生、さすがです。
展示の方はあまり期待していなかったのですが、よかった!東山魁夷氏の作品はアクオスのCMで見たことがあるくらい…正直ピンとこないかな〜と思っていたのですが、やはり本物の力はすごかったです。それまで知らなかったのですが、東山氏は日本画家なんですね。日本画の手法を用いて写実的な作品を作ったというチャレンジ精神も素晴らしいですし、繊細なグラデーションによって生み出される立体感、幻想的なモチーフ、美しいものを観た〜!という満足感でいっぱいになりました。
さすが国民的日本画家、文化勲章受賞者ですね。恐れ入りました。せとうち美術館にはリトグラフが多かったので、肉筆画もたくさん観てみたくなりました。
香川県立東山魁夷せとうち美術館
ADDRESS:香川県坂出市沙弥島字南通224-13
TEL:0877-44-1333
FAX:0877-44-0220
OPEN:9:00〜17:00
CLOSE:月曜日(休日の場合は開館、翌日火曜日が休館)/年末年始(12月27日~1月1日)/展覧会準備期間
常設展入館料:一般 300円
駐車場:無料(瀬戸大橋記念公園西駐車場)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
続いて、先ほどのせとうち美術館から車で約15分のところにある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に移動しました。こちらも谷口吉生先生の建築です!1991年オープンなのですでに四半世紀が経っているはずなのにモダン。美術館には丸亀市立図書館が併設されており、たくさんの市民の方が利用していました。うらやましい限りです。
現代美術館らしく、インパクトのあるオブジェがエントランスで迎えてくれて、期待値MAX!中に入ると中央に舞台のような吹き抜けの気持ちいい空間があります。吹き抜けには自然光が柔らかく入ってくる設計で、上の階との連続性や開放感を移動しながら味わって楽しめます。余計なものを徹底的に排除する谷口先生の建築は、確かに美術館にぴったりなのだとこの辺でようやくわかってきました。
常設展は猪熊弦一郎氏の作品をテーマに沿って入れ替えながら展示しているとのことでした。私が観たのは晩年の作品が多く、いろいろやり尽くしてここにたどり着いた感や、視力が衰え、握力や集中力も低下しても創作意欲が溢れるとこうなるのかな、という感じが、先日見た草間彌生展の『わが永遠の魂』シリーズを思い出させました。比べるものじゃないけれど、東山魁夷氏と違いがありすぎて面白かったかな。
特別展は『志賀理江子 ブラインドデート』空間全体を用いた巨大なインスタレーションでした。こちらも、ぜーんぜん期待してなかったのですが、緻密に計算された完成度の高いインスタレーションで大満足でした。先入観やなんとなくの印象で期待感を抱けずにスルーしていたことって、アートに限らずとても多いんだろうな、と今回強く感じました。事前に調べて、間違いないものだけを選択するのが当たり前になっていますが、偶然の出会いが起こる隙を作っておくことも必要なのかもしれないぞ、と。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術
ADDRESS:香川県坂出市沙弥島字南通224-13
TEL:0877-24-7755
FAX:00877-24-7766
OPEN:10:00〜18:00
CLOSE:年末12月25日から31日、および展示替え等による臨時休館日
常設展入館料:一般 300円
駐車場:JR丸亀駅前地下駐車場・2時間無料
イサム・ノグチ庭園美術館
最後に訪れたのは丸亀市から1時間ちょっと車で走った高松市にあるイサム・ノグチ庭園美術館です。かなりマニアックな美術館なので、普通のガイドブックなんかだと載ってないことも。しかし海外からの訪問も多く好きな人にはたまらない場所のようです。開館日も限られているのですが、たまたま前日に予約ができてラッキー!ガイドさんと一緒に回るスタイルなので、スタート時間に間に合うように急ぎました。
この美術館はイサム・ノグチ氏のアトリエ(基本的に屋外)に置かれた完成・未完成が入り混じった作品群を鑑賞するスタイルになっています。所狭しと置かれた作品群を前にし、しばしフリーズ…。絵画の場合、ホワイトキューブにきちんと並べられたものをお行儀よく鑑賞するスタイルが主流なので楽といえばラクですが、彫刻はそうはいかない面白さがあります。
彼がこの地をアトリエに選んだのは、庵治石(あじいし)が気に入ったからでした。庵治石はキメの細やかさ・光沢・重量感を兼ね備え、日本三大花崗岩の一つとしても知られ、世界的にも花崗岩のダイヤと呼ばれて高く評価されている石材です。素晴らしい素材が創作意欲をかき立ててくれたのでしょう。
石彫作品はその削り方、磨き方で同じ石とは思えないテクスチャーが現れるところが面白いと感じました。ツルツル、ゴツゴツ、ザラザラ、しっとりといういろいろな質感とフォルムの組み合わせを実験している様子が想像できます。それにしても暑い…。イサム・ノグチ氏本人も、ここには春と秋しか滞在していなかったと言うのですから、その時期に行くのがベストですね。そして、ちょっとした丘を登ったところにも作品があるので、歩きやすい靴で行くことをおすすめします。美術館は庭園内含め、全て撮影禁止でした〜。
イサム・ノグチ庭園美術館
ADDRESS:香川県高松市牟礼町牟礼3519
TEL:087-870-1500
OPEN:火・木・土曜日 10時〜/13時〜/15時〜(各約1時間、定員有り)
CLOSE:月・水・金・日曜日(夏期・冬期・特別休館有)
入館方法:予約制(往復葉書にて日時指定で申込)
入館料:一般 2,000円
駐車場:数台分有
1日で3つも美術館を巡ったのは初めてだったかも…さすが、アートに力を入れている香川県ですね。地方の美術館は、その土地にゆかりのある作品を見られる場合が多く、土地の歴史を含めて知ることができるので、ただアートを見るだけでなく多面的にその土地を理解できる場所だと感じました。皆さんも、旅行先ではその土地ならではの美術館を探して、足を運んでみてはいかがでしょうか。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。この記事を気に入っていただけましたら、ワンクリックで応援お願いします。