本日は、インテリアデザイン史の重要人物であるウィリアム・モリス氏について調べたことをまとめました。私はモリスのデザインや考え方(アーツ・アンド・クラフツ運動)が好きで、お客様にもお勧めすることが多いので、しっかり理解しておきたいと思います。
モリスの生きた時代
William Morris(1834 – 1896)は、イギリスのデザイナーで「モダンデザインの父」と呼ばれた人物です。その他の天才と同様に、彼は工芸家、建築家、画家、詩人、思想家などたくさんの肩書きを持っています。
名言は『役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない(Have nothing in your house that you do not know to be useful, or believe to be beautiful.)』この言葉の背景には、当時のヨーロッパの商業主義や、機械化による大量生産で粗悪品が数多く出回るようになったことへの反発があるようです。彼は、職人による手工芸の復活と、装飾としてのデザインではなく生活に密着したシンプルなフォルムや構造を重視しました。
もう少し遡って家具の歴史の流れを確認したいと思います。18世紀半ばに産業革命、18世紀末にはフランス革命が起こり、貴族階級向けの家具デザインは、トップが変わるたびにスタイルが変わる”なんでもあり”の状態でした。一方、庶民にも椅子が普及したのはこの時代。アメリカのシェーカーズチェアやイギリスのウィンザーチェアなどシンプルなデザインの椅子が広く使われました。
そして19世紀後半になると、ドイツでミヒャエル・トーネットが曲木技術を用いたデザイナーズチェアを世界に広めます。その後、モリスがモリス商会を作り、それをきっかけにアート・アンド・クラフツ運動が広まっていきます。さらに19世紀末から20世紀始めにかけてアール・ヌーボーがベルギーやフランフで起こるのです。
モリスの思想は多くの人に影響を与えました。日本人では、民芸運動を起こした柳宗悦氏も、アーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けていたようです。モリスは、職人の作る品質の良いものを安く提供することを目指してモリス商会を作りましたが、納得できる製品を作ろうとすると手間がかかってしまうので、高価で庶民には手が届かないものになり、結果的に失敗してしまいます。
モリスのデザイン
モリス商会消滅後、そのデザインはSanderson and Sons社とLiberty of London社が買い取り「Morris & Co.」というブランド名で現在も販売されています。取り扱っているのは主にファブリックと壁紙。モリスのデザインは、現代から見るとモダンというよりも、どちらかというとクラシックの分類です。
日本で「Morris & Co.」の商品を取り扱っているのが、マナトレーディングで、国内在庫品のMANAS-TEXにはモリスのファブアリックが17柄27種掲載されています。その他の柄は海外取り寄せ品になっていて、壁紙の取り扱いもあります。国内在庫で私のおすすめはブレアラビット。優しいブルーは幅広いコーディネーデョンに使えます。(写真は色が違います)
また、デザインのライセンスを取得して、自社で製品を作っているのが川島織物セルコンとリリカラです。川島セルコンは自社の高い刺繍技術でモリスの図案を再現しています。重厚感のある仕上がりが、クラシックなスタイルにぴったりです。
リリカラは壁紙のコレクションを展開しています。塩ビのクロスは9柄18色に加えて無地20色を取り揃えています。素晴らしいのは無地!マットな仕上がりとイギリステイストのニュアンスカラーで上品さのある仕上がりが期待できます。ペンキで塗ったようなマットな壁紙を探していた時に、恩師にこの壁紙の存在を教えてもらって以来、ヘビーユースしております。柄のクロスも優しいカラー展開でとても使い易いですし、「Morris & Co.」オリジナルの壁紙をパネルに仕立てた商品もあるようです。
モリス商会のデザインした椅子で有名なものはサセックスチェアと呼ばれる挽物加工とい草編みのシンプルなチェアです。実際はモリスがデザインしたものではないようで、このころからすでに、デザイナーとアートディレクターが分業を始めていたようですね。サセックスチェアを調べていたら、こんなものを見つけました。欲しい〜。この直線のデザイン、イギリスっぽい!
モリスがデザインした製品も、今ではきっと工場で大量生産されているのでしょうけれど、手工業を感じさせる図案や他にはない渋い色使いが、今もたくさんの人の心を捉えているのだと思います。良いデザインは時代や地域を超えて、人々に長く愛されるんですね。私も、長く愛されるコーディネーションを心がけていきたいと思います。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。