こんにちは。今日はアートの回です。先日、終了間際の草間彌生展「わが永遠の魂」を鑑賞してきました。鑑賞…どころではなく、人ごみにまみれてようやく一周したというのが本当のところ。ものすごい人気で驚いています。だって、草間彌生ですよ?理解できますか???2004年に森美術館で見た「クサマトリックス」はガラガラで、展示ももっと凝っててものすごーく楽しかったなー。などと昔を思い出しました。
さて今日は、わたくし住吉流のアート鑑賞法を独断と偏見でまとめたいと思います。私は大学で美術史をさらっと勉強しており、現在もアートライフスタイリストの資格取得のための講座に通ってはいるものの、アートについては下手の横好きレベルの知識しかありません。そんな私なので、アートが好きだけど敷居が高い、自分らしく楽しく鑑賞したいと思っている人の何かしらのヒントになれば幸いです。
美術館の特別展に長蛇の列
突然ですが、美術館で有名絵画を見るのと、映画館で映画を見る違いはなんでしょうか?どちらも同じくらいの料金で、一人でもみんなでも行けて共通の話題にもなる。アートも映画も、娯楽性の強いものもあれば、風刺的なもの、意味不明なものなど幅があり、それぞれに感じ方が違ったり、好き嫌いがあったりするところも共通していると思います。
ものすごく大雑把に違いを述べると、アートは敷居が高く、映画は敷居が低い。(例えば美術館は飲食禁止で、映画館はポップコーン食べてもいい!)最近の美術館は、その敷居の高さをなるべく感じなくするように、写真OKの場所を設けたり、音声ガイドをイケメン俳優に担当させたり、いろいろな工夫で集客しています。その結果、入場制限をするほどの人気の展覧会があったり、チケット購入に2時間待ちだったりという盛況ぶりです。アートの敷居はずいぶん下がっているようです。
本当は今でも敷居が高い?
人がたくさん訪れるようになったからといって、アートが身近になったかというと、それは違うような気がします。アートをしっかりと理解するためには、古いものでも現代のものでも、海外でも国内でも、その作品や作家さんの背景を知る必要があるからです。つまり、教養が必要なのです。
アートの価値を、直感だけで判断すべきだと思っている人って、多いのではないでしょうか?いわゆる、好きか嫌いか。例えばピカソなどの例を以って絵の上手・下手で判断することは間違っていると思い込み、判断基準を失って路頭に迷っている人もいるのではないでしょうか?
世界的に有名な絵画の価値を理解するには、その背景を知る必要があります。多くの作品は、新しい時代を切り開いたことに価値があります。今までみんな同じようなものばかりを作っていたところに、全く新しい概念を持ち込んだことが評価されているのです。作品から感じるものだけが価値ではありません。
それでも直感で感じる
アートの価値を理解するには背景を知る必要がある…とハードルを上げましたが、そのアートを投資目的で購入するわけじゃなければ、入場の列に並んでいる間に作家さんのプロフィールを読んだり、簡単に情報収集しておく程度で構わないと思います。むしろ、頭を空っぽにすることをおすすめします。
大きな展覧会が開かれるような有名作家さんの場合、どうしても先入観が邪魔をします。これだけ人が集まるのだから、これだけメディアが騒ぐのだから、きっと素晴らしい作品に違いない、と思ってしまうのです。そして、たくさんある作品の中でも、パンフレットに載っている有名作品ばかりをありがたーく感じるようでは、ちょっともったいないですよね。
有名だとか、教科書に載っているとか、そういうことは一旦忘れて、お気に入りを探しに行くつもりで作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか?
会場は最低でも2周するつもりで
美術館で最初の作品から1点1点丁寧に鑑賞し始める人がいますが、それって真面目すぎます!美術展の構成はだいたい本と同じ。幾つかの章に分かれていて、それぞれの冒頭に概要が示されて、そのあとに作品が並びます。なので、まずは概要を熟読し、このエリアでは何が展示されいるのかをしっかりと理解しましょう。
概要を掴んで展示エリアに入ったら、ザーッと流しながら、気になるものをチェックします。そのエリアの雰囲気がつかめたら、次に進みます。そうやって最後までまずは1周してみると、展覧会のコンセプトや編集意図がつかめるはずです。
一人の作家さんの展覧会であれば、年代による作風ごとにエリアを分けていることが多いでしょう。その変化を知ることで、作品の意味(=価値)が理解できるようになりなります。私の場合、1周して好きな作品がなければそのまま会場を出ます。気になれば2周目でじっくり鑑賞します。
お気に入りの一点を見つける
ザーッと流して見ると、代表作は構図や配色の上でやはり完成度が高いな、と思うことは多いです。ミージシャンのアルバムの中に、シングルカットされてる代表曲とお遊びの雑な曲が混在しているのと同じように、同じ作家さんでもクオリティにばらつきはあります。人間だもの。それは、一気にたくさんの作品を見たことで、微妙な違いに気づき、価値がわかるようになったということです。
ここまできたら、最後にお気に入りの1点を決めましょう。この作品が欲しい!自宅や会社で毎日眺めたい、もしくは気分転換に行く場所にあるといいな、そう思えるものを選びます。1点を選ぼうとすることで、さらに意識が研ぎ澄まされます。
そして、同じ展覧会を見た人たちと、自分のナンバーワン作品について語り合ってみましょう。どうしてそれを選んだのか、他の人はどの作品のどういうところが気に入ったのか、お気に入りを選んでおけば、具体的な話ができるのも良いところです。いろいろな人の感想を聞くことも、鑑賞の幅を広げてくれるので、おすすめです。
草間彌生にエネルギーを奪われる
草間彌生展での私のお気に入りの1点は、ニューヨーク時代の《No. AB.》という作品です。草間さん、こんなに地味な作品も作っていたの?と驚きです。当時、初めてのニューヨークの洗練された街でちょっとかっこつけたかったのかもしれません。何しろ刺激が強い作品が多かったので、ほっこりできました。もう一つ素敵だったのは、初期の日本画の作品。日本画も描けるなんて驚きです。そしてその作品にもドットが無数に描き込まれていました…恐るべし。
冒頭の画像でも紹介した今回の目玉、超大型作品群『わが永遠の魂』は、エネルギーがありすぎて私には受け止めきれませんでした。巨大でビビッドな色使いの作品に四方を囲まれて…見ているだけで、くたくた。今すぐお布団にもぐりこんで眠りたくなるような疲労感を感じました。
作品のエネルギーは、その場に行ってみないと感じることはできませんので、会期はあと本当に少しの5月22日までですが、気になっているけどまだ見てないという方がぜひ行ってみてください。
展覧会名 :国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂
会期 :2017年2月22日(水)– 5月22日(月)
休館日 :毎週火曜日
開館時間 :10:00 – 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
会場 :国立新美術館 企画展示室1E※チケットはオンライン購入がおすすめです
いかがでしたか?アート鑑賞の敷居を少しでも低く感じていただけたら幸いです。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。この記事を気に入っていただけましたら、ワンクリックで応援お願いします。