こんばんは。本日は建築化照明という照明手法をご紹介します。建築”化”照明とは、器具を建築の中に隠して、光のグラデーションで空間を明るくする照明手法(よく聞く間接照明とは厳密に言うと別物)です。
壁や天井で光をバウンド
具体例を紹介します。まずは、天井面を照らすコーブ照明から。左側の窓サッシの上に照明を隠しています。天井の高さが強調されて、梁もかっこ良く演出されています!
続いて四角く天井を折り上げたタイプのコーブ照明。天井でバウンドした光が、壁まで届いて空間全体を明るくしています。ご予算の関係もありますが、手元の明かりにはダウンライトではなく、ソファの横にスタンドを置いた方が、より実用的かつ美しい空間になると思います。
壁を照らすコーニス照明は、ドラマティックな演出が可能です。その場合、壁はつるっとした質感よりも凹凸感のあるものにすると、より効果的です。目線の先にある壁が明るいと、空間全体を明るくしなくても明るさ感を感じられます。
こちらもコーニス照明です。天井のダークな木と壁面のグレーのタイル(もしくは石?)それぞれの質感が引き立っているのは、建築化照明の力ですね。
建築化照明は吹き抜け空間にぴったりです。吹き抜け部分の壁をしっかり照らすことで、より高さを感じられます。
まぶしくないという心地よさ
続いて足元を照らす建築化照明です。和室の小上がりに照明を入れると、特別感がアップします。足元灯は床で光をバウンドさせるため、床の素材がとても重要です。写真のようなフローリングであれば、テカテカのニス仕上げはNG。ツヤのある石も器具が写り込んでしまうので、注意が必要です。足元の明かりは、あまり明るくなくて良いので、パワーの弱い器具を選ぶと良いですね。
こちらは階段を照らす明かりが手すりの中に隠れています。踏面がしっかり見えるので、安全!しかもまぶしく無いのでとても快適な移動空間になります。住宅でここまでするのはとても贅沢ですが、公共の場では見かけるようになりました。
素材で雰囲気が一変
壁や天井、床といった光を反射する面の素材によって、光の広がり方は全く異なります。白はもっとも光の反射率が高いので、壁に当たった光がさらに反対側の壁にも当たり、空間全体を優しい光で包みます。
同じ空間でも壁面が濃い色だった場合、光はそれほど伸びていかず、明暗のコントラストの強いドラマティックな空間になります。どのような空間にしたいか、という完成イメージをまず作り、それにあった照明手法、そして素材・器具を選ぶという順番でプランを進めます。
計画には注意点がいっぱい
天井も壁もすっきりして、まぶしくなく心地良い。メリットいっぱいの建築化照明ですが、計画には注意点がたくさんあります。一番注意すべきなのは、器具丸見え問題です。せっかく建築の中に隠したつもりの器具が丸見え!となら無いように、納まりを十分に検討する必要があります。丸見え問題は、足元灯の部分でも触れた、反射して丸見え!も含まれます。
他にも、間口が狭すぎて光が伸びない問題や、カットオフラインと呼ばれる光の線がくっきり出てしまう問題、天井のでこぼこが目立ってしまう問題など、注意点は様々。納まりをしっかりと考慮してこそ、美しいグラデーションが生まれるのです。
今回の実例写真は間接照明の女王と呼ばれる家元あきさんの所属する大光電機お借りしました。家元さんの著書「Healing Lighting―建築化照明でつくるグラデーション」は、私のバイブルです
いかがでしたか?建築化照明はLEDの進化とともに器具の小型化が進み、バリエーションも増え、ますます進化していくであろう大注目の照明手法です。建築に関わるので、家を新築したりリフォームする時に、早い段階からぜひ建築化照明も計画してみてはいかがでしょうか?本日も最後までお読みいただきありがとうございました。